鈴木浩介監督&4人のプロデューサー陣が参戦! 「連続ドラマW シャイロックの子供たち」オンラインファンミーティングで視聴者から胸アツな意見やリクエストが続々!
池井戸潤の人気小説を井ノ原快彦主演で映像化した「連続ドラマW シャイロックの子供たち」(全5話)。最終話の放送終了後の11月27日(日)にWOWOW加入者を招待してオンラインファンミーティングを開催。鈴木浩介監督に加え、WOWOWドラマ制作部からプロデューサーの青木泰憲、徳田雄久、井口正俊、廣瀬眞子が出席。約2時間のイベントは、WOWOWのドラマを愛する視聴者とのコミュニケーションの場となった。作品に関するさまざまな質問やWOWOWへの熱い意見が次々と飛び出し、制作陣からも人気小説の映像化やキャスティングにまつわる裏話や制作に関する貴重なエピソードが明かされ、大きな盛り上がりを見せた。
~第一部「シャイロックの子供たちを語ろう」~
井ノ原さん主演はどう決まった? 「新鮮さ」と「中間管理職が似合いそうな人」
第一部「シャイロックの子供たちを語ろう」では、鈴木監督と青木プロデューサーが出席し、事前に視聴者から寄せられた質問をベースに、参加者とのインタラクティブなやりとりを交えつつトークを展開した。最初の質問は、主演を務めた井ノ原さんについて。メガバンクで起こった現金紛失事件の真相を追いかけるも、ある日突然、失踪してしまう主人公の西木を井ノ原さんが演じることに決まるまでにどのような経緯があったのか?
青木プロデューサーは連続ドラマWの立ち上げから長年にわたりプロデューサーを務めており、「空飛ぶタイヤ」、「鉄の骨」など池井戸潤原作のドラマをプロデュースしてきた。「キャスティングは作品ごとにケースバイケース」と断わった上で「これだけ数多くの作品を制作してきた中で新鮮な方――池井戸さんの作品やドラマWに出られたことのない新しい方を探して、中間管理職が似合いそうな人として井ノ原さんに最初にオファーしました」と明かす。また、脇を固めるキャスト陣に関しては演技力が高く「一緒に作品を作っていける信頼のある方、その中でもなるべく新鮮なキャスティングを意識している」とも。
青木泰憲プロデューサー
この言葉を受け、これまで青木プロデューサーとともに「空飛ぶタイヤ」、「下町ロケット」などを手掛けてきた鈴木監督は、WOWOWドラマのキャスティングの特徴として「セリフをしゃべらない人、グループショットで誰かが話しているのを聞いている人たちが、こちらから『こうしてくれ』と言わなくてもできる人が多いです。群像劇が多いんですが、すばらしい人が多いといつも思いますし、グループショットで撮れてしまうのでカット割りをしなくていいんです」とそのレベルの高さに言及する。
鈴木浩介監督
鍵がかかっていないロッカールーム描写の"リアル"
池井戸作品でたびたび舞台となる銀行だが、銀行員を取り巻くシビアな環境や彼らが背負う重責に「絶対に勤務したくない!」と思ってしまう人も多いのでは? こうした描写について「本当にあんなに過酷なのか? 誇張ではなく事実なのか?」という質問も……。
青木プロデューサーは「ある程度の取材とリサーチと”想像”で作っていますが、池井戸先生自身が実際に銀行員だったので、そういう意味で(原作の描写を)信頼して作っています。ドラマを作るときは、銀行に勤めている方、もしくは銀行で働いた経験のある方が『銀行監修』で入るので、リアリティを保ちつつ、エンタメとして成立するように制作しています」と語る。
鈴木監督は、劇中のロッカールームに鍵がかかっていないという描写に触れ「ドラマは2009年の設定ですが、『2000年代には確かにロッカールームに鍵がかかっていない会社もありました』との”裏取り”をさせてもらっています」と決して制作側のご都合主義ではなく、リアルな声を反映させた上で、時代背景なども加味して作っていると語った。また、ドラマでは原作からいくつか変更された部分もあるが、制作陣が原作をどのように解釈したのか? 映像にする際に意識した部分を問う質問に、鈴木監督は「(映像にする際にすべてを)原作のままでやるのは難しいし、”WOWOWらしさ”を追求しつつ、原作の魅力を損なうことなく脚本に落とし込んでいくのが僕らの仕事」と語り、実際に前川洋一氏を中心に練り上げられた脚本について「読んで『なるほど』と感動しました」と振り返る。
青木プロデューサーは「原作は短編小説で、1話ごとに主人公が変わっていく群像劇なので、連ドラにする際の主役を決めるのが難しかった。その中で、いちばん大きな出来事があるのが西木であり、彼を主人公に一本、線を引こうと決めました」と語る。そして「(視聴者が)何に引っ掛かって、最後まで観ようと思ってくれるか――? 今回は、あえて西木が”落ちる”ところを先に見せることにして、どうなるんだろう? と思ってもらうのが狙いでした」と明かした。
池井戸潤が「いちばん好きな作品」の映像化を許可したワケ
とはいえ、原作に変更を加えるには「池井戸先生の許可が必要」ということで「実は、最初に作った脚本は池井戸先生からNGが出て『もっともっと考えなさい』と宿題を出されたんです。『空飛ぶタイヤ』は原作通りにやれば面白い作品なので作りやすかったんですが、今回は非常に難しかったし、だからこそこれまで手を付けられなかったんです。池井戸先生は、この『シャイロックの子供たち』がいちばん好きな作品であり、自身の原点だとおっしゃっていて、映像化はさせないと思われていました。でも『鉄の骨』を作った時、先生がすごく喜んでくださって、そのタイミングで(本作の映像化を)話したら『いいね』と。でも脚本にOKが出たらGOという感じだったので悩みながら、何回も提案させていただきました」と企画実現までの苦労を明かした。
~第二部「WOWOWドラマについて語る会」~
参加者の声「もっと長いドラマを」「時代劇を作ってほしい!」
その後の第二部「WOWOWドラマについて語る会」には青木プロデューサー、徳田プロデューサー、井口プロデューサー、廣瀬プロデューサーが参加し、各ルームに分かれて視聴者とのオンライン座談会が行なわれた。
徳田プロデューサーのルームでは、視聴者から「WOWOWのドラマは、話数が少なく、あっという間に終わってしまう。じっくりと見たいので、話数を多くしてほしい」という、韓国ドラマやアメリカの海外ドラマのようにじっくりと長く1シーズンを描いてほしいとの要望、さらに「時代劇の制作本数が日本全体で減っているので、WOWOWにはぜひ時代劇をもっと作ってほしい」といった熱いリクエストの声が寄せられた。
徳田雄久プロデューサー
井口プロデューサーのルームでは、コロナ禍でのドラマ制作の状況を尋ねられ、作品のクオリティーと、スタッフやキャストの安全を両立させるための苦労や制作体制について明かした。また、井口Pが担当した作品の第2シーズンを待ち望む声や、参加者からの具体的な企画の提案などで話が盛り上がる場面も。視聴者が連続ドラマWを楽しみにしている熱量を肌で感じ取ることができ、「今後の企画や制作に活かしたい」と締めくくった。
井口正俊プロデューサー
廣瀬プロデューサーは「ドラマの原作選びのポイント」について尋ねられ、「新作として本屋に並ぶものは、既に映像化に向けて話が進んでいるケースや他社からアタックされていることが多いので、古本屋で作品を探したり、過去の受賞作品を調べてまだ映像化されていないものを探すことが多いです」といまだ映像化されていない”お宝”の原作を求めて日々、リサーチを行なっていると明かした。
廣瀬眞子プロデューサー
連続ドラマW第1弾「パンドラ」コンビが挑むオリジナルドラマ
連続ドラマWに立ち上げの時期から携わってきた青木プロデューサーは、視聴者とのやりとりの中で、2008年に放送された連続ドラマW第1弾「パンドラ」の制作時を述懐。「どうすれば見てもらえるか? 視聴者の好みは? と考えて、研究しようと当時、人気のあったアメリカのTVシリーズを見て、登場人物の人数や年齢、場面転換、社会的なテーマなどについて徹底的にリサーチしました」と振り返った。
「連続ドラマW パンドラIII 革命前夜」WOWOWオンデマンドで配信中
また今後のドラマWについて、参加した視聴者からは「教育をテーマにした作品を作ってほしい」「実話に基づいた作品、ノンフィクションに近い作品で社会をえぐってほしい」などの要望の声も! 青木プロデューサーは「人気作家の作品は圧倒的な人気があるんですが、そろそろ自分自身のオリジナルの企画、原作がない作品で勝負したいと思っています」と語り、主演・唐沢寿明、脚本・井上由美子(「パンドラ」)で現在制作中のオリジナルドラマ「フィクサー」に言及。
さらに「地上波はスポンサーによる予算枠が決まっているけど、WOWOWはそうではないので、飛躍的に予算をかけるようなすごいドラマ、通常の3本分の予算を1本に集中するような作品を作ってみたいですね」と”野望”を口にしていた。
オンラインミーティングを終えて、改めてプロデューサー陣からは「直接、皆さんからいろんな感想や意見をお聞きできたので、それを今後に活かしていきたい」(青木プロデューサー)、「私では普段考えつかないお客様視点のご指摘を多くいただけました」(徳田プロデューサー)、「勉強になりましたし、いろいろお話ができて楽しい時間でした」(井口プロデューサー)、「お顔を見ながら感想をお伺いして、作品が『届いたな』という実感を肌で感じることができたうれしい時間でした」(廣瀬プロデューサー)といった声が上がるなど実りの多い時間になったよう。盛況のうちにオンラインミーティングは幕を閉じた。
<番組情報>
■連続ドラマW「シャイロックの子供たち」
※episode0無料放送(全5話/episode0を含む)
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取材・文/黒豆直樹 撮影/曽我美芽