キャリア採用

PROJECT STORY 01

スクラップ&ビルドを繰り返し、 放送局が配信サービスを ゼロからつくりあげる。

スクラップ&ビルドを 繰り返し、放送局が 配信サービスを ゼロからつくりあげる。
WOWOWのコンテンツをいつでもどこでも楽しめるWOWOWオンデマンドサービス。2021年に開始した当サービスの始まりは、2012年の動画配信黎明期でした。前例のない配信事業への飽くなき挑戦をご紹介します。
※2012年は「WOWOWメンバーズオンデマンド(=WMOD)」

プロジェクトメンバー

  • メディア事業局局長 WODサービス部部長

    1996年/新卒入社

    WMODの立ち上げ時はデジタルコンテンツ部に所属し、リーダーとして各関係部門と調整、ラインナップの拡充や権利処理の関係などを担当。

  • メディア事業局 会員ビジネス部部長

    1999年/新卒入社

    2011年のWMOD立ち上げ当時、デジタルコンテンツ部にてサービス設計・ラインナップ・運用・権利処理を担当。各部と協力して権利クリアランスとラインナップ構築に従事し、サービスをローンチ。並行して運用体制を整備。

  • デジタル戦略局 システム開発部部長

    2001年/新卒入社

    技術センター(技術局)のメンバーと連携し、設備や人手の検討やシステム構築に従事。社内関係部門や協力会社との連携を踏まえて、サービスを提供できる環境を整備。

  • メディア事業局 WODプロダクト部部長

    2014年/キャリア入社

    入社後は、WODのシステム開発管理担当し、放送と配信を融合したサービス開発に携わる。リニューアル時には、プロジェクト指揮者としてシステム刷新を担当。

  • メディア事業局 WODサービス部

    2013年/新卒入社

    UI/UXの向上を目指したデザイン変更や対応デバイスの拡充、機能の追加を実施。ユーザーが毎日来ても飽きないアプリを日々思考している。

  • メディア事業局 WODサービス部

    2016年/新卒入社

    ユーザーの体験価値向上のため、スポーツにおいて、競技ごとのページ作成を行い、それぞれの特性に合わせたページ編集・運用整備を実施。

  • メディア事業局 WODプロダクト部

    2018年/新卒入社

    WODに携わりたいという思いから入社。サービスのTV対応や新機能(ライブ配信カレンダー、通知機能など)の実装に向けた取りまとめを担当。

始まりは
加入者特典の配信サービス

創業以来、長きにわたり放送事業を中核としてきたWOWOW。本格的に配信市場へと挑戦したのは、2012年にサービスを開始した「WOWOWメンバーズオンデマンド(WMOD)」から。WOWOWの加入者であれば追加料金なしでライブ配信や見逃し配信が見られるという放送の付帯サービスとして始まりました。今や動画配信は当たり前の時代ですが、当時はまだ公式サービスとして運営している企業はほとんどありませんでした。

当時経営企画に所属していた現在のメディア事業局局長が発起人となり、WMODのプロジェクトはスタート。2000年代初頭から少しずつ動画配信などのデジタルコンテンツが増え始めていたことから、WOWOWもデジタル市場に参入すべきだと考えるようになりました。とはいえ長年放送事業を主軸にしてきた社内からは、配信市場への参入に懸念や不安の声が多く上がりました。放送というWOWOWの主サービスを毀損しないか。そもそも技術的に可能なのか。前例のない挑戦に対して慎重な意見が出るのは仕方ありません。「結果を示さないことには、社内の不安や懸念を解消することはできない。だからこそ、サービスを形にすることが最重要だと考えました」と当時を振り返ります。

実は、WOWOWでは過去に何度か配信コンテンツの提供にチャレンジをしていたのですが、どれも息の長いサービスになることはありませんでした。その当時のメンバーを誘い、本格的にWOWOW史上初の配信サービスプロジェクトを発足。「このタイミングで配信を成功させられなかったら、もう二度とチャンスはないだろうと、使命感にかられた」とプロジェクトの初期メンバーは語ります。2011年にプロジェクトが発足して翌年の2012年、「UEFA EURO2012TM サッカー欧州選手権」の放送でWMODを導入することが決定。大規模な大会の中継は放送では何度も経験してきましたが、ここまで大規模なコンテンツのライブ配信は、WOWOWとしても初めての挑戦でした。まずどのような技術基盤を整えるべきか、ベンダーや社内の技術スタッフと一つ一つ議論するところからスタート。「WMODの導入を決定してから大会の放送まで1年も猶予のない状況。正直に言えば無謀な挑戦でしたが、そうは言っても大会は待ってくれない。今日できることをがむしゃらに進めながら、システムの基盤を構築していきました。少人数チームでの開発だったので、スピード感を持って意思決定や作業を進めることができましたね」。

WMODのローンチに合わせて大会以外のコンテンツをそろえるため、運用体制の構築に奔走していたのが、 デジタルコンテンツ部でした。配信権の獲得に向けた、コンテンツ調達部門との調整、各種団体との二次利用の交渉など内容は多岐にわたり、まだ「配信」という概念が確立されていないなか暗中模索が続きます。加えてお客さまに「サムネイル(画像)」や「みどころ」などのUIをどのようにお届けするか?運用オペレーション設計およびWMODサービスそのものの社内浸透にも力を入れました。当時放送が中心にあったWOWOWで、配信体制をゼロからつくりあげるのは並大抵のことではありません。当時、放送はOKでも、配信ではNGになる映像もしばしばありました。そうなると放送と配信で映像の出し分けも必要に。そんな状況を一つ一つ整理しながら、スムーズに配信できる現場づくりを進めました。体制の整っていない状況でしたが、WMOD初導入である「UEFAEURO2012TM サッカー欧州選手権」は無事に閉幕。時間と体制づくりに追われながらも配信を成功できたのは、メンバー全員に「このチャンスを絶対にものにする」という強い意志があったからでした。

独自性の発見と技術面の壁

配信サービスの導入は成功したものの、サービスを継続させる上で大きな課題となったのがコンテンツ不足。当時は配信にまつわる権利もまだ確立されておらず、コンテンツ権利者との権利交渉が難航したため、コンテンツのストックが追いつかない状況だったのです。配信ラインナップを拡充しつつ、放送と配信ならではのサービス体系構築を目指して始めたのが、スポーツにおける未放送試合の配信。WOWOWの放送は3チャンネルなので同時に放送できるコンテンツはどう頑張っても3つまで。しかし、配信にはその壁がありません。例えば、海外サッカーのラ・リーガでは、全10試合中5試合をWOWOWで放送し、放送しない5試合をWMODで配信しました。また全米テニスを始めとするグランドスラムでもピックアップコートと題して、特定のコートを終日配信する施策を展開。こういった配信独自の企画はお客さまから好評の声を多く獲得し、放送ではお届けできない試合・映像を見せる「配信ならでは」のサービスに大きな手応えを感じたそうです。「これならお客さまに満足していただきながら、他社と差別化できる」まさにピンチをチャンスに変えた企画。2016年にはLPGA女子ゴルフで選手専用カメラを初めて導入するなど、配信独自のコンテンツ企画を多く展開し、放送と配信を同時に行う価値を最大化していきました。

お客さまのニーズを捉えたコンテンツを配信できるようになると、次に課題となったのがシステムの安定化です。利用者が増えると、配信へのアクセスが集中してサーバーダウンしてしまう恐れがある。せっかく価値のあるコンテンツを配信しても、快適に視聴できなければお客さまに満足していただけません。システムサーバーを大改修し、より多くの方に配信を楽しんでいただけるよう、技術面も強化しました。プロジェクト発起人でもあるメディア事業局局長は当時をこう振り返ります。「コンテンツ担当が注目度の高いコンテンツのラインナップをそろえると、利用者の増加でシステムが耐えられなくなる。そこで技術担当がシステムを強化すると、さらに注目度の高いコンテンツの配信が決まる。その繰り返しで、コンテンツとシステムが進化していきました」。2018年には放送同時配信サービスを開始し、全体の9割近いコンテンツを同時配信。これだけのボリュームで、かつオリジナル作品を含む放送同時配信は国内では初めてでした。さらに、翌年にはお客さま待望のテレビ配信にも対応。コンテンツとシステム、両者で切磋琢磨しながら着実にサービスを成長させていきました。

WOWOWオンデマンド開始

WOWOWの配信サービスにとって大きな転機となったのが、2021年の「WOWOWオンデマンド(WOD)」の開始です。これまでのWMODは加入者の付帯サービスという位置付けだったためテレビの所有が必須でしたが、WODからはPC、スマートフォンといったデバイスがあれば誰でも視聴できる仕様に変更。お客さまはBS視聴環境が整い次第、追加料金不要で放送も楽しめるサービス体系としました。

とはいえサービス内容自体はWMOD時代とほぼ同じ。「コンテンツの見やすさやアプリの使い勝手が、他社の配信サービスと比べると明らかに劣後している。このままではお客さまがどんどん他社に流れてしまう」という危機感から、WODサービス部は、サービスの機能拡充へ踏み出しました。例えばいくつもの試合を同時に配信することもあるスポーツ中継。いつ何の試合が配信されるのか、一目で分かりやすくするために、時刻表形式で表示しました。このライブ配信カレンダーを考案したのが、当時入社3年目の若手メンバー。自身もサッカー観戦が趣味の当事者として、「あったら便利だな」と思う機能を考案、実装していきました。また、当時を知るサービス部メンバーは、社内での配信事業ヘの視線はこの頃から少しずつ変化していったと言います。コロナを契機に配信ニーズが高まり、WODの加入者も年々増加していたため、配信に対して前向きな声も多く聞かれるようになりました。

WOWOWオンデマンド
フェーズ2始動

WODを開始して1年後の2022年。プロジェクト全体を統括するメディア事業局局長は、ある決断を下します。それはUI/UX向上に向けたシステムと開発プロセスの刷新。前年に新機能を追加したとはいえ、ユーザビリティにおいては他社の配信サービスよりもまだまだ劣勢にある。この状況を打破するためには、システムを丸ごと入れ替える必要があると考えました。WMOD時代から磨き続けてきたシステムを一度ゼロの状態にする。勇気のいる決断でしたが、前に進むためには必要な選択でした。併せて開発プロセスにもメスを入れました。今後配信市場を生き残るためには競争力を培わなければならない。そのためには今まで以上に改善スピードを上げる必要がある。開発チームに対して、スピードを最優先に開発を進めるよう方針を伝えました。「何かあったら責任を取るから、新しい挑戦をどんどんやっていこう」この言葉のおかげで、チームメンバーは前例のない施策にも積極的にアクションできるようになったと言います。

具体的には、毎日訪れても飽きないアプリづくりを目標に、ビジュアルや機能面の刷新に取り組みました。ユーザーの視聴データに基づき、1日ごとにお客さまのニーズに合わせて配信コンテンツの表示レイアウトを変更。幅広いコンテンツを取り扱うWOWOWならではのジャンル横断特集を企画するなど、他社サービスとの差別化も図りました。また、システム面ではスポーツのジャンルごとに専用UIを開発。例えば、テニスでは他のスポーツとは異なり、試合前日まで対戦カードが決まらないことがほとんど。そのため、従来のアプリシステムだと試合開始までに対戦カードを入れたサムネイルの更新が間に合いませんでした。そこで、テニス専用UIとして、今何の試合がライブでやっているかが一目で分かるシステムを開発。お客さまがすぐに見たい試合に辿り着ける仕様に刷新しました。最初に試験的にウェブブラウザのみでの実装だったので、今後アプリ版も実装する予定です。

今後の展望

これまで周回遅れだったWODは、今ようやく他社と同じスタートラインに立てるようになりました。WMOD時代はトラブル対応や権利交渉に追われていましたが、現在は安定的にコンテンツを配信し、改善スピードも格段に向上。最近では、他社サービスがWODの仕様を参考にしているケースが見られることも。スタートラインに立った今、WODとしてどのように歩を進めていくのか。WODのメンバーたちは、“攻めの姿勢”を大事にしていきたいと口をそろえて言います。

「月々2300円という金額は他社と比べると割高。だからこそ、選ばれ続けるためにWOWOW独自の魅力で人々を惹きつけていかなければいけません。特集の独自性で勝つのか、映像のクオリティで勝つのか、ジャンルの幅広さで勝つのか。有料放送としてサービス開始した頃から、お客さまの耳に声を傾け続けて信頼関係を築いてきたことがWOWOWの強みであると自負しています。あらゆる武器を磨きながら、お客さまのために他社と一線を画すサービスへとWODを進化させていきたいと思います。そのために必要なのが、攻め続ける姿勢。メンバー一丸となって、前例や正解のない問いにも臆することなく挑戦していくつもりです」。

2012年、他社に先駆けて配信サービスに着手し、サービスの安定化やコンテンツの充実をなど前例がないからこその壁にも直面してきました。お客さまに喜ばれるサービスとして常に変化を恐れずに前進してきましたが、今後も感動を与えられる存在であるための飽くなき探求が続きます。